鍵師の苦労

鍵師は、基本的に顧客からカギに関連したトラブルや防犯強化対策などの依頼を受けて現場へ出向き、開錠やカギの追加取付け等の作業を進めます。

業務の繁忙・閑散の波が激しい

カギのトラブルはいつ発生するか予測がつきませんので、業務の件数を日々に平準化することはできません。
従って、顧客のニーズに応えるためには、常時出張可能な体制を取り、待機しておく必要があります。
鍵屋によっては年中無休で、24時間対応をとっているところさえもあります。

もちろん、企業に勤める場合は人数も多く、シフト制で働けますし、独立開業すれば自分で営業時間を規定することもできます。
ただ、個人の場合は営業時間を定めてしまうということは、収入の減少にもつながりかねません。
いずれにしても、休みは不定となりがちで、日によって件数には随分波があります。

様々な依頼案件に対応する難しさ

カギの種類は膨大に及び、また、「鍵のトラブル」と一口にいっても、様々な案件があります。
案件に応じて、それぞれ必要な技術や知識も違ってくるので、1人の鍵師がどんな依頼にも必ず対応できるわけではありません。
鍵師の収入源のトラブル解決の料金は、基本的に「1件当たり○○円」という定め方がされています。

そのため、依頼に応じ、案件を解決するごとに入ってくることになります。
せっかく顧客から依頼を受けても、対応できなければ、売上のチャンスを逃すことになってしまいます。
カギの技術は常に進化を続けているため、職人として、常に技術を磨き・向上させていく努力が求められます。

腕を上げて独立した後の苦労も大きい

鍵師は、技術を磨き、腕を上げれば比較的独立開業のハードルの低い仕事です。
しかし、トラブル発生時の対応という仕事で、常にトラブルが発生する訳ではないので、リピート客が付きにくい商売です。

もちろん、1人の顧客から信頼を受けて、他の顧客からの依頼に結びつくケースはありますが、常に新しい顧客となりうる層を開拓し、確保しておく必要があります。
しかし、「仕事を得よう」として利益率の低い仕事まで、無分別に受けていると、薄利多売となり赤字になり、すぐに廃業に追い込まれるケースも見受けられます。

最近は、鍵屋の数が増加しており、黙っていても顧客のトラブル解決の依頼が立て続けに舞い込むケースはまずありません。
安定して収益を上げるためには、きちんとした経営計画を立てて、顧客の信頼の得られる仕事を続けるとともに、住宅地でチラシを投函するなど必要な営業や宣伝活動が必要です。
鍵屋は、職人的な要素が強い仕事ではありますが、顧客に信頼してもらって初めて成り立つサービス業の側面があることを忘れてはいけません。

鍵師の将来性

最近、「手に職をつけたい」「定年を気にすることなく長く働きたい」などの理由から、鍵師の仕事を目指す人が増えています。
日々の生活に密着した仕事であり、ニーズが高い仕事のように思えますが現状、そして今後はどのようになっていくのでしょうか。

鍵師のおかれた現状と将来性

職人的な要素の強い鍵師の仕事は、時代が変わっても安定して需要はあります。
しかし、カギのトラブルが急増することは考えにくく、鍵師の数も増えたことから、現時点で飽和状態ではないかとも言われています。

独立開業は比較的容易

しかし、鍵師には国家資格はなく、誰でも技術を習得すれば現場で働くことが可能です。
また、腕を上げれば、独立開業も比較的容易なことから新規参入のハードルは低いといえます。
もちろん、他の職能的な仕事と同様に、鍵師もこの仕事のみで大きな成功を得るのは容易ではありません。

鍵師の収益源の多くは、合いカギの複製やカギの紛失を始めとする開錠など、トラブルの対応によるものです。
客からのトラブル対応依頼待ちの仕事になりがちで、自ら積極的に営業をしなければ、安定して継続的に収入を得ることは簡単ではないでしょう。

カギ業界にも押し寄せるIT化の波

鍵といっても、オートロックが主流の集合住宅のカギ、戸建て住宅の玄関の鍵、自動車のキー、金庫の鍵など、様々な種類のカギがあり、その仕組みも日進月歩です。
例えば、非接触型のICチップによるオートロック式のカギやスマートフォンのアプリを活用してカギの開・閉を管理する「スマートロック」などという商品まで出てきました。
他の商品の技術の進歩に従うように、カギの技術も進歩を続けていきます。

このような電気的な鍵が普及すれば、機械的な開錠・施錠が求められるシーンが激減し、従来の鍵師の技術が求められることが減ることも予想されます。
現状をみる限りでは、スマートロック等の普及はまだ進んでおらず、従来型のカギのニーズがなくなると考えるのも早計です。
いずれにしても、今後ともカギのIT化は進み続けるとみられ、鍵師もまた新しい製品に対応できるよう技術や知識の習得に力を入れなければいけません。

全てのカギがIT化されるとは思えない

基本的に、カギと言っても様々な場所に使われており、それぞれ使われ方も異なります。
高い頻度で使わない場所やセキュリティレベルの差は大きく、高いコストをかけてまで、IT化されるカギにはおのずと限界があると思われます。

また、仕組みがよくわからないIT錠よりも、機械式錠を信頼する方も多いのも事実です。
また、IT錠とはいえ仕組み自体には機械的な部分もあるわけですし、IT錠にトラブルがないと言いきれるわけでもありません。
将来的には、そうしたIT錠の技術に鍵師の技術も対応できるようになっていくのかもしれません。

鍵師の資格

「鍵師」を英語では「lock-smith」と表現し、「smith」は「職人」を指しますので、直訳すればカギ職人という意味です。

国家資格があるわけではない

昔から鍵師を希望する人は職人的な修行が必要であり、鍵師を目指す人は、鍵屋さんに就職し修行を積んでいました。
カギに関連した仕事をするだけなら、特別な資格や学歴が必要ではなく、専門技術や知識さえ習得すれば誰でもカギ関連の仕事はできます。

鍵師に資格は必要?

近年、カギに携わる職人の均質化という社会の要請から、平成9年に「鍵師」・「錠前師」の商標登録が行われ、「日本鍵師協会」が設立されました。
そして、国家資格ではないものの、1級・2級のそれぞれの鍵師技能試験が始められ、「鍵師」の資格制度がつくられました。
鍵師技能試験に準拠した、鍵師養成7日間講習は、短期間ですが密度の濃い講座です。
錠前・カギの基本的な構造とメカニズムなど合カギ作製、開錠訓練、さらには営業方法まで知識・技術・起業方法など全部で30項目近くを習得することができます。

鍵師技能検定試験に完全に準拠した、「鍵師」資格のスムーズな取得に導く魅力ある講座です。
この資格は、国家資格ではなく協会認定の資格ではありますが、カギ事業者や消費者の安心感や信頼を広く得るためには、取っておきたい資格です。
この検定試験に合格し認定を受けることで、「協会公認の鍵師資格を所持している」とアピールでき、起業にはたいへん有利です。
もちろん正式に「鍵師」の名称を用いて事業を行いたい方は必須とも言える、取っておくべき資格でしょう。

2級鍵師技能検定試験

鍵師技能検定試験は、「2級鍵師」と「1級鍵師」の2種類に分類されていますが、まず、2級鍵師技能検定について説明します。
2級検定試験の会場は東京で毎年数回行われ、試験の形式は筆記試験と実技試験に分けて実施されます。
筆記試験は、錠前全般についての専門的な基礎知識に関して問われます。
選択問題だけでなく記述問題も出題されますので、しっかりした知識がないと合格することはできません。

実技試験は玄関ドアのカギを含む数種類の一般的に普及しているカギを、ピッキングの方法で定められた時間内に開錠する技術、錠前の構造に関する技術などを問う問題が出題されます。
合格すれば「2級鍵師登録」(2年間有効)することが可能となり、登録すれば「2級鍵師証明書」が発行されます。

難関の1級鍵師技能検定試験

開催場所は東京で3年に1回実施されます。
試験の形式は筆記試験と実技試験で、筆記試験はカギ全般に関する専門的知識で、出題方式は2級と同様に選択問題と記述問題両方の出題です。
受験資格は2級鍵師資格の所持者ですので、鍵師としての実務経験や知識を持っている方が圧倒的に有利です。

実技試験は、数種類の錠前をピッキングの方法で開錠する技術、シリンダーから合カギを作製する技術、ピンの組替技術を問う出題がされます。
2級と同様に、合格すれば「1級鍵師登録」(2年間有効)が可能となり、登録すれば「1級鍵師証明書」が発行されます。

鍵師のやりがい・魅力

依頼してくる顧客は皆、トラブルを自分で解決できずに困っています。
カギの紛失や故障で部屋に入れなくなってしまったり、キーを車内に挿したままドアにロックがかかってしまった客は、多くは初めての経験です。

依頼に応えられて笑顔で感謝されたとき

突然の非常事態に慌てていることが多く、たいていの場合、修理や開錠に取り掛かる前は「本当に開くだろうか」と不安で途方に暮れた表情です。
しかし、数分後には部屋や車に乗れるようになり、ホッとした表情と安心できた笑顔が返ってきます。

鍵師にとって客の笑顔を見るとき・「ありがとう」と感謝の声をかけてもらうときが、一番のやりがいを感じる瞬間と言えるでしょう。
客は大きな不安を抱えながらも鍵師を信頼して仕事を依頼しているのですから、鍵師は信頼に応えなくてはなりません。

難易度の高い錠の開錠に成功したとき

新しいカギの技術が進歩している中、ときには経験のない高い難易度の事案に遭遇し、鍵師自身が上手くいくだろうかと不安になることもあります。
しかし、こちらが不安である態度を表せばそれは顧客にも伝わり、不安が伝染します。

冷や汗をかいても、不安な気持ちは出さぬようにしながら、「さすがですね!」「助かりました!」と笑顔で感謝されることを目指して粘り強く作業を続けなくてはいけません。
その分、開錠できた時の達成感は大きくなります。
それができる鍵師になれる様、年々進化する新しいカギの技術に遅れないように日々研究や自己研鑽を積み成長していくことが求められます。

一つの技術をマスターすればするほど、奥の深い世界だと思える瞬間も多く、生涯かけて1つのコトを突き詰めたい人は、やりがいを感じる仕事です。

セキュリティに関するアドバイスを真摯に聞いてくれた時

開錠依頼を受けたカギが陳腐化しており、新人の鍵師レベルでも開錠が可能であるような場合もあります。
そのような場合、新しくセキュリティレベルの高いカギへの交換を勧めることも必要です。
ただ新しいカギを売ろうとするのではなく、親身になったアドバイスであることをきちんと受け取ってもらえた時は、信頼されているという満足感があります。

独立開業して事業を安定した軌道に乗せた時

鍵師には専門な技術や知識が求められ、個人によって大きく腕に差が付きます。
鍵師は職人的な要素が強いので、企業に勤務する就業形態だけでなく、腕に自信がつけば独立して開業することも可能です。
独立すれば自分の技術や営業力によって、更には従業員を雇用することにより、大きな収入を得ることも目指せます。
定年があるわけではありませんので、手に職を付けて長く働き続けたいと考えている人には、最適の仕事だと言えそうです。